あさね髪 ゆふのみやまの ほととぎす はやうちとけね おもひ乱れて
ほととぎす 鳴くひとこゑを しるべにて 心を空に あくがらしつる
君と吾 ことかたらへば ほととぎす しのびねすると 人やきくらむ
今宵さは ねにあらはれね ほととぎす かたらふことの しるしと思はむ
夏の夜は 山ほととぎす 待ちかねて ゆふつげ鳥の 鳴きぬべきかな
人はいさ われは宵より 逢坂の 夕つげ鳥の ねをのみぞ鳴く
いとどしく 袖のしをるる ほととぎす なくねや恋の しるべなるらむ
あけぬなり つひには名のれ ほととぎす まつには鳴かぬ ものと知らるな
我が身をも うらみつるかな ほととぎす 待たずは鳴かぬ 歎きせましや
金葉集
音せぬは 待つ人からか ほととぎす たれ教へけむ 數ならぬ身を
ほととぎす 鳴く嬉しさを つつめども 袖にはこゑも とまらざりけり
ほととぎす こゑ待ちかねて ゆふけとふ 道のうらにも ことよきものを
今こそは ふたむら山の ほととぎす こゑおりはへて あやに鳴くなれ
なきおくれ こちこせ山の ほととぎす きなせの里の 松の絶え間に
み熊野の はまゆふかけて ほとときす 鳴くね重ねよ いくゑなりとも
くれにけり こゑをさめてよ ほととぎす おのかをぐらの 山にはあらずや
詞花集
鳴きつとも 誰にかいはむ ほととぎす 影よりほかに 人しなければ
ほとときす 末の松山 かぜ吹けば 波こす暮に たちゐ鳴くなり
あけにけり 月みる空の ほととぎす 絶えずものを おもはするかな
五月雨の 空をながめて 過ぐせども 絶えて音せぬ ほととぎすかな