和歌と俳句

源頼政

木の葉散る やどは萱屋の 板庇 はしに臥す夜は 夢もみはてず

千載集
みやこには まだ青葉にて 見しかども もみぢ散りしく 白川の関

子を思ふ 鳰の浮巣の ゆられきて すてしとすれや 身かくれもせぬ

まき流す にふの川瀬に ゐるは めなれにけりな たちもさわがず

ふる かたのの草を うちなびけ こまかに刈るや とたちなるらむ

あづまめと 寝覚めてきけば 下野や あそのかはらに 千鳥なくなり

冴ゆる夜は 遠ざかりゆく 志賀の浦の 波のこなたに 千鳥なくなり

うち渡る やすのかはらに なく千鳥 さやかに見えぬ 明け暮れの空

夜舟こぎ 沖にてきけば 常陸の海 鹿島がさきに 千鳥なくなり

時雨する 交野のみ野を かりゆけば ならの真柴の 露ぞこぼるる

千載集
越えかねて いまぞ越路を 帰る山 雪降る時の 名にこそありけれ

身の上に かからむことぞ 遠からぬ 黒髪山に ふれる白雪

降る雪に 木曽路の谿は うづもれて かけても橋の 見えぬころかな

踏み分けて 越ゆる嵐の 山風に こずゑの雪も また降りにけり

雪に刈る まがきの竹の 音のみぞ ときときわれを おどろかしける

雪つもる 山路にまよふ 山人は おのがつまきを こりぬとやおもふ

みかりする のもせに雪の 降りぬれば やまをにたたむ 蔓だになし

しをりせし 柴のさ枝も うづもれて かへる山路に 雪にまよひぬ

暮れぬとて かへる野辺より たつ鳥の 羽音ばかりに あはせつるかな

待たれつる 雪解かとこそ 思ひつれ いまだ時雨の 雪にぞありける