2009年8月2〜9日 ことば悦覧in京都 記録集    home 

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 森田一弥さん編   8月05日 Am10〜  晴れ 

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 その05  

 森田流設計 開始

佐藤:5年間左官屋さんで修業を終えて、左官一筋ではなかったんだ ここで設計して。
森田:そうですね。ふふふ

佐藤:左官修業はじめたときに、あるていど5年ぐらいで辞めようと考えてたんですか。
森田:いや。あんまり思ってなくって、最初の何だろう現場で仕事が見れたらいいな〜と思って行ってたら。こんな面白いのはやらずにおれないっていう
佐藤はははは
森田:やり始めたら。どうも5年ぐらいはやらないとものには成らんなと思って。それでまあ結局5年間、やっていて。
佐藤:天才左官には成れなから。この辺で辞めといてと。で、設計ですか

森田:設計やるようになって。
佐藤:設計やるって何処かの事務所の勤めてたとかじゃないんでしょう
森田どこも勤めてない

佐藤:いきなり自分で事務所 開所して
森田いきなり自分で

佐藤:いいですね〜、あんまりいきなり独立する人は少ないですよ。どこか事務所に勤めて後独立するみたい話は多いけども。いきなり自己流で
森田:自己流ですよ
佐藤:森田流で

森田:いまだに やりかたがよく分からない。
佐藤:森田流追求中で ふふふ
森田:ふはあっははは
佐藤:そうですか。自分で設計事務所を始めたのはどうしてですか。大学で設計してたんですか

森田:大学時代も設計の研究室にいなかったんで。設計を誰かに教わったことは無いんですよね。
佐藤:だから 何でまた設計やろうと思ったのか不思議ですよ
森田ふふふまあ、ね〜ふふふ。何だろうやっぱり設計しないと面白くないかな〜。職人やってると、まあね 設計している人って漆喰か。何だろう 指定してくるような、設計士しかいないわけですよ。「俺が設計しないと、左官やっていたって、面白い仕事一生出来ないや」と思って。ふふふふ
佐藤:設計している人間が左官の仕事を解ってない
森田解ってないし。うん
佐藤:そうか 一杯ありそうだな

森田僕が仕事作ればもっともおしろい仕事出来るってのは思ってましたね。
佐藤:左官目線で建築家を批評して。なるほど。
森田うん
佐藤:最初に設計したの在るんですか

森田:最初に設計した
佐藤:左官が設計するとこうなるぞ〜みたいな

 資料を探しに席を立つ森田

森田:一番最初のやつが・
佐藤:いきなり設計の仕事来ないじゃないですか
森田:いきなりやったやつが、町家の修復の仕事だったんで
佐藤:はあ はあ

森田:ここに置いてないな〜。もう一軒あるんですけど。
佐藤:似ているんですか、違うんですか
森田:あの〜

(町家へ 修復する)

佐藤:
英語で書いてあるんですけど、これはどうしたんですか
森田スペインに行ったときに持っていったんで。英語になっていて。一番最初の仕事は町家の修復の仕事で。3軒木造の建物並んでいて。それを店舗にしたいって話で。

で、町家っていうか。町家の跡形もなくって。それをもう一度なんとなく町家の雰囲気をもつような。したいな〜って。

佐藤:改装しまくって、町家じゃない部分を全部むいて。それから手を加えて。修復みたいな仕事だね。

森田修復ですよね。うん。古い建具集めて来て。それを填めて。んで、古い土壁集めて来て塗ってっていう。昔ながらのやりかたでキチンとなおしたって。
佐藤:ゼロから考えるって事ではないけど、ある種の設計ですよね。普通設計だと更地に主観的な表現するみたいな話だけども。ゼロから考えられないわけだよね。地球上に建てるってことはゼロから建てているわけじゃないんだけども。修復はある種の不自由さ制限は多いですよね。
森田:そうですね。

(絵森田さんhpより)


佐藤:いきなっり修復から設計はいると、好きに設計しなさいって言われると困る感じもするけど。どうなんですかね。
森田:僕は
佐藤:さら地、ゼロから設計したってもあるんですか
森田:今はありますね
佐藤:スタート時は改修
森田:改修ですね。

佐藤:先人が設計した建築に、長く建築を生きのびさせるために。設計を加えて、使える時間を長くしていくみたいな。
森田:そうですね。
佐藤:町家改修のような仕事はやったことが無いのですか、どんな感じでしたか?左官の修業時代のことが活きましたか。5年間耐えているからな

森田:文化財の現場にずーっといって、どうやって直すかってのは解っていたんで。どうって直せばいいかっていのは解ってるわけですよね
佐藤:森田さんは修復の世界では有名人ですか
森田:左官屋の世界でですか

佐藤:文化財修復なら森田だとか、腕は一流じゃないけど能書きは一流だとか
森田:はあははは文化財って、学術的にやっている人がいるので。
佐藤:左官でも?
森田:左官はどうかな〜。左官のことは僕は一番解っているかな〜
佐藤:そうでしょう。
森田:うん

佐藤:
聞いたこと無いものね。宮大工という話は聞いているけど。左官とか畳みのへりとか。細かい飾りはどうなるんだとか。専門的な話になるじゃないですか。和紙もそうだし。襖紙つくるったて、技術があるのか?どうすうんだ。それぞれの領域の専門家がいないと。技術を伝承していけませよね。文化財が在るから昔からの技術が伝わっていくてのもあるけど。民間の修復は文化財のそれより楽ですか?鼻歌まじりですーすーっとですか

森田:
いやそんなことはないですよ。文化財で出来ない事やっているんですよね。一番最初のやつは、とにかく元通りというか。元の町家と同じ作り方で。町家のような雰囲気のものをもう一度作るっていうプロジェクトだったんで。

佐藤:ということは本流 町家やみたいなものが、解っているということですよね。
森田:そうですね。
佐藤:それはどういうものなんですか?これが町家だ!町家の定義って何かあるんですか。
森田:本家の町家でもないんですよね。本家の町家って住む場所なので。それはまあ「店舗として再生しよう!」というやつなので。違いますよね。うん。だけど何だろう「元々ちゃんと町家の雰囲気があるものを店舗にする」って言うだったら、やりようがあるんだけど。町家の雰囲気も何もないものを店舗にしちゃったら、町家じゃ  全然違うものになちゃう。

佐藤:町家じゃないけど、表象的には見えると。そうだよね。
森田:そこに表面的に何かこう〜、ただ直しましたっていうのは僕は面白くなかったので。じゃーどうするか?って考えたときに、「じゃ古いものを集めて来て、町家の残骸を集めて来て、それをコラージュして、町家っぽいものにしよう」っていうのが考えたコンセプトで。だから新しく作った建具が一つもなくって。全部建具を組み合わせて、これここに使える、ここに使えるって感じでやったのが、最初のプロジェクト

佐藤:
100年前の素材を今使うって感じだよね
森田:ええ
佐藤:設計すると言えば工業製品とか、新しいと言うのも変だけど。設計して建築に使う材料というのはだいぶ、昨日つくった物じゃなくって、100年前に作ったものも設計の材料として認めたり。落ちている、川から流れてきた木も。あらゆるものが素材として、見えているということですよね。

森田:そうですね
佐藤:またには新しい製品とか使うかもしれないけども。設計者が使う素材はそうとう時間が広い処から集めて来て。並べ換えるというか。
森田:そうですね。うん。町家再生してって、ただ カタチだけを直したっていうのでは面白くないので。当時作られたものを集めて来てもう一辺組み合わせて「それが町家ですよ」っていうことは言えるかもしれないかな〜と思ったんですね。

佐藤:なるほどね。町家のカタチも近世期などの物流とともに、京都とか大阪とか江戸は近世期に人がぐーっと集まった。都市化し巨大な消費地になって、物流の拠点が海沿い、川沿い分布し、三都から地方に逆に物が行ったり来たりのノコギリ商いが盛んだったから。 各地に似たような町家が、拠点拠点に今でもありますよね。他の町家、京都以外に敦賀にも町家ふうのものが在るじゃないですか。村上や酒田や尾花沢にもあるわけだけども。町家と言われるものに関わったのは京都だけですか。

森田:僕は京都だけですね

(絵 森田さんhpより)

佐藤:
町家専門の建築家はいるんですかね、そういう伝統的建築に関わっている人の情報を知らないので。京都に来て初めて古い建築を、古いものというか京都で設計するということは町家と関わらないでいられないっていう感じがしますね。色々聞いて来て
森田:そうですね、間取りが町家、なんだろう
佐藤:町家から京都の建築家は脱出出来ないのか
森田:はあはは、うん
佐藤:町家と生きるのが自然だみたいな、当たり前みたいな状況があって。来て初めて分かった。町家の屋根の勾配だとか表の面を凸凹させる、同じにするなど。言葉もそうだけどフィジカルに町家から拘束されているというか、当然の前提条件としてあって。その中でどういうふうに設計するという行為を、その中に入れ込んでいって。自分の意図することを作っていくかという。内部は別として前庭と後ろ庭をコンセプト、テーマにして作っていく。魚谷さんのような建築家もいるし。森田さんが言われたように、素材を集めてきて作ると。今中庭のことは語られてないんですけどね。素材について、時間を超えた素材を持ってきて、町家を再解釈しつつ、ある種の批評もしているわけですよね。最初の町家を作った人達には考えられない町家になっていたわけだからね。さっき森田さんは町家じゃないと言ったけど、それは町家に対するある種の批評みたいになるわけじゃないですか。

森田:うんうん
佐藤:だから面白いな〜と聞いてて思うんですよ。そういう仕事は俺の暮らしている所にないからなね。倉とかは在ったにもして、生活するところじゃなくって物を置くところだからね。
森田:やっぱ民家をなおすっていうのは凄く、最近は価値があることだっていうふうに。
佐藤:あれも怪しいんだけど、耐震改修したり、断熱し、省エネ民家に再生だみたいなキャッチコピーで言うじゃないですか。何を再生しているのか分からない状況がある。気分でそうなっているわけで、古い民家を再生して使うということが、現代人に生活とどう関係するのかよく分からない。古い民家を改修して、煤けたおおきな曲がった梁を「いいわね〜日本だ〜」みたいなことを言われると、それは違うだろうと思うんですけど。民家再生の意味がよく分からないというのが俺にはあるんだよね。京都の場合はそこで暮らしているんだからしょうがないよね。そのカタチと形式から逃れられないから、改修とか再生とか言う前に現実に使われ生きているんだから。特殊な地域だな〜って。この数日で。

そのなかで主体があっても、表現するみたいなことを教えられて来ているわけじゃないでか、皆さん。森田さんの場合は自己流だからさ〜
森田ははあはは

佐藤:京都の状況に抗うような あまりそれに対する抵抗があまりないと思うんだけど。みんなストレスないのかな〜と思って聞いているだけど
森田:ははあははあは
佐藤:ありそうな気もするし、魚谷さんのように、やる気で飛ばす人もいたし。柳沢さんのような感じでも。 町家に対しての色んな構え方を教えてもらいまして面白いんですけど。 森田さんの場合は左官という建築家には無い裏技を身につけたことによって、今言われたように、町家のカタチがなくなったものを、自分が考えている身の回りにある素材を使って、町家をもう一度批評的に作ってみようというのは新しタイプです

森田文化財のやり方なんですよ。 15:07


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