石上乙麻呂朝臣歌一首
雨零者将盖跡念有笠乃山人尓莫令盖霑者漬跡裳
雨ふらばきむとおもへるかさのやま人になきせそぬれはひづとも
湯原王芳野作歌一首
吉野尓有夏實之河乃川余杼尓鴨曽鳴成山影尓之弖
吉野にあるなつみの河の川よどに鴨ぞなくなる山影にして
湯原王宴席歌二首
秋津羽之袖振妹乎珠匣奥尓念乎見賜吾君
あきづ羽の袖振る妹をたまくしげ奥におもふを見賜へあが君
青山之嶺乃白雲朝尓食尓恒見杼毛目頬四吾君
青山の嶺の白雲朝にけにつねに見れどもめづらしあが君
山部宿禰赤人詠故太政大臣藤原家之山池歌一首
昔者之舊堤者年深池之瀲尓水草生家里
いにしへのふるき堤に年深み池のなぎさに水草生ひにけり