和歌と俳句

万葉集

巻第三

 << 戻る | 次へ

     羈旅歌一首 并短歌
海若者 霊寸物香 淡路嶋 中尓立置而 白浪乎 伊与尓廻之 座待月 開乃門従者 暮去者 塩乎令満 明去者 塩乎令干 塩左為能 浪乎恐美 淡路嶋 礒隠居而 何時鴨 此夜乃将明跡 侍従尓 寐乃不勝宿者 瀧上乃 淺野之? 開去歳 立動良之 率兒等 安倍而榜出牟 尓波母之頭氣師

わたつみは くすしきものか 淡路島 なかにたておきて 白浪を いよに廻らし ゐまち月 あかしのとゆは ゆふされば しほを満たしめ 明けされば しほをひしめ しほさゐの 浪をかしこみ 淡路島 磯がくりゐて いつしかも この夜の明けけむと さもらふに いのねかてねば 瀧のうへの 浅野のきぎし あけぬとし たちさわぐらし いざこども あへてこぎでむ にはもしづけし

     反歌
嶋傳 敏馬乃埼乎 許藝廻者 日本戀久 鶴左波尓鳴
     右歌若宮年魚麻呂誦之 但未審作者

嶋づたひ みぬめの崎を こぎみれば やまと戀ほしく たづさはに鳴く