和歌と俳句

万葉集

巻第三

 << 戻る | 次へ >>

譬喩歌

     紀皇女御歌一首
軽池之 ?廻徃轉留 鴨尚尓 玉藻乃於丹 獨宿名久二

軽の池の 浦みゆきみる 鴨すらに 玉藻のうへに ひとりねなくに

     造筑紫觀世音寺別當沙弥満誓歌一首
鳥総立 足柄山尓 船木伐 樹尓伐歸都 安多良船材乎

とぶさたて 足柄山に 船木伐り きに伐りゆきつ あたらふなきを

     大宰大監大伴宿祢百代梅歌一首
烏珠之 其夜乃梅乎 手忘而 不折来家里 思之物乎

ぬばたまの その夜の梅を た忘れて 折らず来にけり 思ひしものを

     満誓沙弥月歌一首
不所見十方 孰不戀有米   山之末尓  射狭夜歴月乎  外見而思香

見えずとも たれ戀ひざらめ 山のはに いさよふ月を よそに見てしか

     余明軍歌一首
印結而 我定義之 住吉乃 濱乃小松者 後毛吾松

しめゆひて わが定めてし すみのえの 浜の小松は 後も吾が松