和歌と俳句

万葉集

巻第三

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     笠女郎贈大伴宿祢家持歌三首
託馬野尓 生流紫 衣染 未服而 色尓出来

たくまのに 生ふるむらさき きぬにしめ 未だきずして 色にいでにけり

陸奥之 真野乃草原 雖遠 面影為而 所見云物乎

みちのくの 眞野のかやはら 遠ほけども 面影にして 見ゆと云ふものを

奥山之 磐本菅乎 根深目手 結之情 忘不得裳

おくやまの いはもと菅を ねふかめて 結びしこころ 忘れかねつも

     藤原朝臣八束梅歌二首 八束後名真楯房前第三子
妹家尓 開有梅之 何時毛〃〃〃 将成時尓 事者将定

妹が家に さきたるの いつもいつも なりなむ時に ことはさだめむ

妹家尓 開有花之 梅花 實之成名者 左右将為

妹が家に さきたる花の 梅の花 実にしなりなば かもかくもせむ

     大伴宿祢駿河麻呂梅歌一首
梅花 開而落去登 人者雖云 吾標結之 枝将有八方

梅の花 さきてちりぬと 人は云へど わが標結ひし 枝にあらめやも

     大伴坂上郎女宴親族之日吟歌一首
山守之 有家留不知尓 其山尓 標結立而 結之辱為都

山守の 有りける知らに その山に 標結ひ立てて 結ひのはぢしつ

     大伴宿祢駿河麻呂即和歌一首
山主者 盖雖有 吾妹子之 将結標乎 人将解八方

やまもりは けだしはありとも わぎもこが 結ひけむ標を 人解かめやも