和歌と俳句

万葉集

巻第三

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     大伴宿祢家持贈大伴坂上家之大嬢歌一首
朝尓食尓 欲見 其玉乎 如何為鴨 従手不離有牟

朝にけに 見まく欲りけむ その玉を いかにせばかも 手ゆ離れずあらむ

     娘子報佐伯宿祢赤麻呂贈歌一首
千磐破 神之社四 無有世伐 春日之野邊 粟種益乎

ちはやぶる 神の社し なかりせば 春日の野辺に 粟まかましを

     佐伯宿祢赤麻呂更贈歌一首
春日野尓 粟種有世伐 待鹿尓 継而行益乎 社師怨焉

春日野に 粟まけりせば しし待ちに つぎて行かましを 社しうらめし

     娘子復報歌一首
吾祭 神者不有 大夫尓 認有神曽 好應祀

わが祭る 神にはあらず ますらをに つきたる神ぞ 好く祀るべし

     大伴宿祢駿河麻呂娉同坂上家之二嬢歌一首
春霞 春日里之 殖子水葱 苗有跡云師 柄者指尓家牟

春霞 春日の里の うゑこなぎ 苗なりと云ひし えはさしにけむ

     大伴宿祢家持贈同坂上家之大嬢歌一首
石竹之 其花尓毛我 朝旦 手取持而 不戀日将無

なでしこが その花にもが あさなさな 手に取り持ちて 戀ひぬ日無けむ