和歌と俳句

万葉集

巻第三

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     大伴宿祢駿河麻呂歌一首
一日尓波 千重浪敷尓 雖念 奈何其玉之 手二巻難寸

一日には 千重浪しきに おもへども なぞその玉の 手に巻きがたき

     大伴坂上郎女橘歌一首
橘乎 屋前尓殖生 立而居而 後雖悔 驗将有八方

たちばなを やどにうゑ生ほし たちてゐて 後に悔ゆとも しるしあらめやも

     和歌一首
吾妹兒之 屋前之橘 甚近 殖而師故二 不成者不止

わぎもこが やどのたちばな いと近く うゑてしゆゑに ならずはやまじ

     市原王歌一首
伊奈太吉尓 伎須賣流玉者 無二 此方彼方毛 君之随意

いなだきに きすめる玉は 二つ無し かにもかくにも 君がまにまに

     大網公人主宴吟歌一首
須麻乃海人之 塩焼衣乃 藤服 間遠之有者 未著穢

すまのあまの しほやききぬの 藤ごろも 間遠にしあれば いまだ着なれず

    大伴宿祢家持歌一首
足日木能 石根許其思美 菅根乎 引者難三等 標耳曽結焉

あしひきの いはねこごしみ 菅の根を 引かばかたみと 標のみぞ結ふ