和歌と俳句

万葉集

巻第三

挽歌

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     上宮聖徳皇子出遊竹原井之時見龍田山死人悲傷御作歌一首
     小墾田宮御宇天皇代墾田宮御宇者豊御食炊屋姫天皇也諱額田謚推古
家有者 妹之手将纒 草枕 客尓臥有 此旅人憾怜

     上宮聖徳皇子 竹原の井にいでます時に 龍田山の死人を見て悲しびて作らす歌一首
     小墾田の宮に御宇天皇の代 小墾田の宮に御宇は豊御食炊屋天皇なり 諱は額田 謚は推古
家にあらば 妹が手まかむ 草枕 たびに臥やせる この旅人あはれ

     大津皇子被死之時磐余池陂流涕御作歌一首
百傳 磐余池尓 鳴鴨乎 今日耳見哉 雲隠去牟
      右藤原宮朱鳥元年冬十月

     大津皇子 死を被りし時に 磐余池のつつみにして涕を流して作らす歌一首
ももづたふ 磐余の池に 鳴く鴨を 今日のみ見てや 雲隠りなむ

     河内王葬豊前國鏡山之時 手持女王作歌三首
王之 親魄相哉 豊國乃 鏡山乎 宮登定流

     河内王を豊前の国の鏡山に葬る時に 手持女王が作る歌三首
おほきみの にきたまあへや 豊国の 鏡の山を 宮と定むる

豊國乃 鏡山之 石戸立 隠尓計良思 雖待不来座

豊国の 鏡の山の いはとたて こもりにけらし 待てど来きまさず

石戸破 手力毛欲得 手弱寸 女有者 為便乃不知苦

いはとわる たぢからもがも たよわき をみなにしあれば すべの知らなく

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