額田王思近江天皇作歌一首
君待登 吾戀居者 我屋戸之 簾動之 秋風吹
額田王 近江天皇を思ひて作る歌一首
君待つと 吾が恋ひ居れば わがやどの 簾動かし 秋の風吹く
鏡王女作歌一首
風乎太尓 戀流波乏之 風小谷 将来登時待者 何香将嘆
鏡王女が作る歌一首
風をだに 恋ふるはともし 風をだに 来むとし待たば 何か嘆かむ
吹?刀自歌二首
真野之浦乃 与騰乃継橋 情由毛 思哉妹之 伊目尓之所見
真野の浦の よどの継橋 こころゆも 思へか妹が いめにし見ゆる
河上乃 伊都藻之花乃 何時〃〃 来益我背子 時自異目八方
河の上の いつ藻の花の いつもいつも 来ませ我が背子 時じけめやも
田部忌寸櫟子任大宰時歌四首
衣手尓 取等騰己保里 哭兒尓毛 益有吾乎 置而如何将為 舎人吉年
田部忌寸櫟子 太宰に任けらゆる時の歌四首
衣手に 取りとどこほり 哭く児にも まされる吾を 置きていかにせむ
置而行者 妹将戀可聞 敷細乃 黒髪布而 長此夜乎 田部忌寸櫟子
置きていなば 妹恋ひむかも しきたへの 黒髪しきて 長きこの夜を
吾妹兒矣 相令知 人乎許曽 戀之益者 恨三念
わぎもこを 相知らしめし 人をこそ 恋のまされば 恨めしみ思へ
朝日影 尓保敝流山尓 照月乃 不?君乎 山越尓置手
朝日影 にほへる山に 照る月の あかざる君を 山越しに置きて