冬川や湯田の蟹石出ずなりぬ
大きなる嘴鳥をるや冬川原
橡胡桃冬川筋の立木かな
すたれたる運河も見えつ冬の川
冬川や那須の高根のそがひ見ゆ
鮭鱒の孵化のさかりや寒の入
煤掃の焚火や竹の爆く音
鷲の羽を宿の箒や榾埃
カラカラな藻草に溜る霰かな
帆渡りの島山颪霰かな
吹きまはす浦風に霰霙かな
機仕舞ふ一間広さや餅莚
梅三分咲く餅搗の日取かな
闃として砕氷船も横たはる
鼻焦がす炉の火にかけて甲羅酒
古への冕の形を海鼠かな
何処来て里に落ちたる吹雪かな
防戦に焼かれし村や蘆枯るゝ
燈台に双棲の君や鳴く千鳥
いつよりか温石先生といはれけり
不覚なる病に寝じと懐炉かな
沼移りしてつどひをる鴨小鴨
楯に似し岩めぐり鳴くは千鳥かな
防風林風致を添ふる避寒かな
針山をかりて夫婦が避寒かな