鴨うてばとみに匂ひぬ水辺鳥
野路ここにあつまる欅落葉かな
落葉すやこの頃灯す虚空蔵
枯野ゆくや山浮き沈む路の涯
枝つづきて青空に入る枯木かな
枯木宿はたして犬に吠えられし
風立ちて星消え失せし枯木かな
冬ごもり未だにわれぬ松の瘤
日昃るやねむる山より街道へ
北風や青空ながら暮れはてて
炭出すやさし入る日すぢ汚しつつ
枯野はや暮るる蔀をおろしけり
凩や倒れざまにも三つ星座
桐の実の鳴りいでにけり冬構
大年やころほひわかぬ燠くづれ
大年やおのづからなる梁響
旭にあうてみだれ衣や寒ざらへ
八つどきの助炭に日さす時雨かな
町空のくらき氷雨や白魚売
寒鴉己が影の上におりたちぬ
茶の花や畚の乳子に月あかり
団欒にも倦みけん木莵をまねびけり
梟の目じろぎいでぬ年木樵
燦爛と波荒るるなり浮寝鳥
一片のパセリ掃かるる暖炉かな
雲の影しきりにはしる枯野かな
十夜寺をいゆるがすなり山颪