和歌と俳句

高浜虚子

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鎌倉は冬暖かに蚯蚓這ひ

我こゝにかくれ終りし大冬木

冬霞して昆陽の池ありとのみ

山廬まだ存す岳麓枯木中

枯木中仏に礼し僧帰る

照り昃りはげしき時雨日和かな

やはらかき餅の如くに冬日かな

荒るるままその儘にして草枯れて

冬海や一隻の舟難航す

カーテンに障子の桟の影くねり

炬燵熱し牡丹開きたる思ひ

幹事席火鉢一つに五六人

毛布にくるまり時化の甲板に

旅鞄しまひ借著の羽織著て

霜除のその勢ひのくくり縄

漁家二軒石蓴の岩を踏みて訪ふ

彼来たり無駄話して日脚伸ぶ