緑竹に蒼松にある冬日かな
山並の低きところに冬日兀
この冬を籠りて稿を起こさんと
古き家によき絵かゝりて冬籠
忘れゐし事にうろたへ冬籠
欠伸して頭転換冬籠
無駄な日と思ふ日もあり冬籠
冬枯の庭を壺中の天地とも
暖き冬日あり甘き空気あり
贈り来し写真見てをる炬燵かな
わが眉の白きに燃ゆる冬日かな
炭斗のふくべの形見飽きたり
炭斗のありし所になかりけり
雨晴れて枯木潤ふけしきかな
炬燵あり城に籠るが如くなり
我が仕事炬燵の上に移りたる
歩み去る年を追ふかに庭散歩
眠れねばいろいろの智慧夜半の冬
短日のきしむ雨戸を引きにけり
寒むければ防空頭巾著て書見
眠れねば足の先き冷えまさりつゝ
硝子戸に頬すりつけて冬日恋ふ
しぐれつゝ梢の柿のまだ残り
冬枯にわれは佇み人は行く
昃りし障子四枚や時雨来し
三汀の墓は質素や水仙花