和歌と俳句

高浜虚子

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雪催ひせる庭ながら下り立ちぬ

霜の菊讃へて未だ剪らずをり

茶の花に茜してすぐさめけらし

この落葉どこ迄まろび行くやらん

落葉掃き集めある道行どまり

つきささる枯葉一枚枝の先

大空の片隅にある冬日かな

御仏と相合傘の時雨かな

探しものして片づけて冬籠

冬籠きのふの今日も探しもの

冬ざれや石に腰かけ我孤独

石に腰即ち時雨れ来りけり

今日は寒し昨日は暑しと住み憂かり

おでんやの湯気吹き飛ばす空ツ風

熱燗に泣きをる上戸ほつておけ

熱燗にあぐらをかいて女居士

鰤どころ鯨どころや紀伊の海

蓄へは軒下にある二俵

訪へば庭にて焚火してありと

ストーヴの小さき煙突小書斎

世の様の手に取る如く炬燵の間

ニ三度引き返す風邪流行りけり

骨布団それにもなれて暖く

霜よけももうとる頃よ縄ゆるみ

門松を立てていよいよ淋しき町

古家の畳替して目出度けれ