和歌と俳句

西東三鬼

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聖き夜のなかぞらに魚玻璃に

東方の聖き星凍て魚ひかる

聖き魚ははなびらさむき卓に生く

円光もみじろがね魚ねむる

聖き書外よりも黒く魚と在り

小脳をひやし小さき魚をみる

水枕ガバリと寒い海がある

不眠症魚は遠い海にゐる

長病みの足の方向海さぶき

吹雪昏れ白き実弾射撃昏れ

砲音をかぞふ氷片舌に溶き

アダリンが白き軍艦を白うせり

松林の卓おむれつとわがひとり

黒馬に映るけしきの海が鳴る

園丁の望遠鏡の帆前船

微熱ありきのふの猫と沖をみる

肺おもたしばうばうとしてただに海

右の眼に大河左の眼に騎兵

白馬を少女涜れて下りにけむ

汽車と女ゆきて月蝕はじまりぬ