聖き夜のなかぞらに魚玻璃に
東方の聖き星凍て魚ひかる
聖き魚ははなびらさむき卓に生く
円光もみじろがね魚ねむる
聖き書外よりも黒く魚と在り
小脳をひやし小さき魚をみる
水枕ガバリと寒い海がある
不眠症魚は遠い海にゐる
長病みの足の方向海さぶき
吹雪昏れ白き実弾射撃昏れ
砲音をかぞふ氷片舌に溶き
アダリンが白き軍艦を白うせり
松林の卓おむれつとわがひとり
黒馬に映るけしきの海が鳴る
園丁の望遠鏡の帆前船
微熱ありきのふの猫と沖をみる
肺おもたしばうばうとしてただに海
右の眼に大河左の眼に騎兵
白馬を少女涜れて下りにけむ
汽車と女ゆきて月蝕はじまりぬ