みちのくは小家小家の鯉幟
松の花牡丹の蕋と踏まれ居り
年々や栗の若葉に思ふこと
雨のごとき露の牡丹に下りたちぬ
みちのくの花がつみとははづかしげ
鶏よけをはづし招かれ茣蓙布団
鶏よけをかけめぐらして蚕飼かな
これはまた葉の一つなき紅空木
滝つ瀬の移り見えつつ若葉かな
日輪と月輪を空や虹の暈
この鳥居くぐれば若葉心かな
眉ひける飯豊の雪や明易き
みちのくに来て菖蒲湯のありがたや
日ざし来し塗師が家や桐の花
何といふ餅の白さや若葉宿
夏空や飯豊はひける雪一すぢ
赤き羽の川々蜻蛉新鋤田
けふもまた啼くくわくこうや新鋤田
七日ゐて七日の晴や田植時
みちのくの五月の晴を見に来り
早乙女も早苗女房も若葉より
黄あやめと紫あやめ雨の庵
緑蔭の白牡丹一つ咲いて一つちりぬ
牡丹けふ雹降る中にほころびぬ
牡丹かかぐ玉の蕾に雹止みぬ
両手もて抱かむと思ふ牡丹かな