和歌と俳句

水原秋櫻子

御柱立つると早瀬わたりくる

亀ケ城薊むらさきに梅雨ふかし

牧へ行く仔馬が瀧に打たれ過ぐ

郭公や瑠璃沼蕗の中に見ゆ

梅雨の瑠璃なす淵にしづくする

蕗のかげ赤腹の魚群はしりたり

水漬きつゝ新樹の楊眞白なり

瑠璃沼に瀧落ちきたり瑠璃となる

新樹すぎ巌壁の貌にひた向ふ

巌壁の梅雨の青草を畏れ見る

夏薊赭き湯道に噴き出たり

岩かゞみ岩磊塊と岨に伏す

岩裂きて生ひし白樺若葉せり

岩つばめひるがへる岨に雪古りぬ

地獄沼赭泥となりて夏涸れたり

岩つばめ赭泥縦横に干割れたる

青き梅雨四圍の山よりふりそゝぐ

梅雨の湖青山の峡にあふれたり

鷹翔けて梅雨雲ながろその左右を

梅雨の鷹磐梯の雲へ翔け入りぬ

梅雨の湖わたりて低き馬柵を見る

馬柵くぐり仔馬が湖の岸に立つ

船寄れば仔馬新樹に馳せかくる

ランプ吊りなほ暮れかねつ時鳥

時鳥しば鳴き清水蕗を打つ