よみ人しらず
冬さむみこほらぬ水はなけれども吉野の瀧はたゆるよもなし
能宣
ふゆされば嵐のこゑも高砂の松につけてぞきくべかりける
元輔
高砂の松に住む鶴冬くれば尾上の霜やおきまさるらん
元輔
冬の夜の池の氷のさやけきは月の光のみがくなりけり
よみ人しらず
ふゆの池のうへは氷にとぢられていかでか月のそこに入るらん
恵慶法師
あまの原そらさへさえや渡るらん氷と見ゆる冬の夜の月
源景明
みやこにてめづらしと見る初雪は吉野の山にふりやしぬらん
元輔
ふるほどもはかなく見ゆるあは雪のうらやましくもうちとくるかな
藤原佐忠朝臣
我ひとり越の山路にこしかども雪ふりにける跡を見るかな
兼盛
山里は雪ふりつみて道もなしけふこむ人をあはれとは見む
人麿
あしひきの山路もしらず白樫の枝にもはにも雪のふれれば