むさしあふみ踏みだにもみぬものゆゑに何に心をかけはじめけむ
新勅撰集・恋
おろかにぞ言の葉ならばなりぬべきいはでや君に袖をみせまし
とこの上に絶えず涙はみなぎれどあふくまかはとならばこそあらめ
新勅撰集・恋
さきの世の契りありけむとばかりも身をかへてこそ人に知られめ
くれなゐに涙の色は深けれどあさましきまで人のつれなき
あはれてふなけのなさけもかかりなばそをだに袖の乾くまにせむ
命にはかへてあひみむと思へどもなれて別れは惜しからじやは
いかでいかで歎きをつみし報ひとて逢ひ見て後に人をわびしむ
はしたかの空しもはてずひきすゑてかりそめにだに逢ひ見てしがな
わぎもこが思ひさくるにしたがはで恋はかみなきものにぞありける
ねは深く思ひそめてき奥山の岩もこすけのすけはなけれど
君をだにも人づてならでおとしめば我が身の咎もうれしからまし
新勅撰集・恋
こひこひて頼むるけふのくれはとりあやにくにまつほどぞ久しき
わたつ海の思ひし深き潮あひは今朝たちかへる涙なりけり
唐衣かさねし夜半のたまくらに付きけるしわを形見にぞ見る
ゆきなやみ岩にせかるる谷川のわれてもすゑに逢はむとぞ思ふ
ひれふりしまつらの山のをとめごもいとわればかりおもひけむかも
わがこひは小野のえくちし人なれや逢はでなな夜も過ぎぬべきかな
恋ひ死なば鳥ともなりて君が住む宿のこずゑにねぐらさだめむ
千載集・恋
歎くまに鏡のかげもおとろへぬ契りしことの変るのみかは