太上天皇幸于難波宮時歌
太上天皇 難波の宮に幸す時の歌
大伴乃高師能濱乃松之根乎枕宿杼家之所偲由
右一首置始東人
大伴の高石の濱の松が根を枕き寝れど家し偲はゆ
旅尓之而物戀之伎尓鶴之鴨毛不所聞有世者孤悲而死萬思
右一首高安大嶋
旅にしてもの恋しきに鶴が音も聞こえずありせば恋ひて死なまし
大伴乃美津能濱尓有忘貝家尓有妹乎忘而念哉
右一首身人部王
大伴の御津の濱にある忘れ貝家にある妹を忘れて思へや
草枕客去君跡知麻世婆岸之埴布尓仁實播散麻思呼
右一首清江娘子進長皇子
草枕旅行く君と知らませば岸の埴生ににほはさましを
右の一首は清江娘子 長皇子にたてまつる
太上天皇幸于吉野宮時高市連黒人作歌
倭尓者鳴而歟来良武呼皃鳥象乃中山呼曾越奈流
太上天皇、吉野の宮に幸す時に、高市連黒人が作る歌
大和には鳴きてか来らむ呼子鳥象の中山呼びぞ越ゆなる