大行天皇幸于難波宮時歌
大行天皇、難波の宮に幸す時の歌
倭戀寐之不所宿尓情無此渚崎未尓多津鳴倍思哉
右一首忍坂部乙麻呂
大和恋ひ寐の寝らえぬに心なくこの洲崎廻に鶴鳴べしや
玉藻苅奥敝波不榜敷妙乃枕之邊人忘可袮津藻
右一首式部卿藤原宇合
玉藻刈る沖辺は漕がじ敷栲の枕のあたり思ひかねつも
長皇子御歌
吾妹子乎早見濱風倭有吾松椿不吹有勿勤
我妹子を早見濱風大和なる我れ松椿吹かずあるなゆめ
大行天皇幸于吉野宮時歌
大行天皇、吉野の宮に幸す時の歌
見吉野乃山下風之寒久尓為當也今夜毛我獨宿牟
右一首或云 天皇御製歌
み吉野の山のあらしの寒けくにはたや今夜も我がひとり寝む
宇治間山朝風寒之旅尓師手衣戀借妹毛有勿久尓
右一首長屋王
宇治間山朝風寒し旅にして衣貸すべき妹もあらなくに