和歌と俳句

万葉集

巻第二

   久米禅師娉石川郎女時歌五首

久米禅師、石川郎女を娉ふ時の歌五首

水薦苅信濃乃真弓吾引者宇真人佐備而不欲常将言可聞 禅師

み薦刈る信濃の真弓我が引かば貴人さびていなと言はむかも

三薦苅信濃乃真弓不引為而強佐留行事乎知跡言莫君二 郎女

み薦刈る信濃の真弓引かずして弦はくるわざを知ると言はなくに

梓弓引者随意依目友後心乎知勝奴鴨 郎女

梓弓引かばまにまに寄らめども後の心を知りかてぬかも

梓弓都良絃取波氣引人者後心乎知人曾引 禅師

梓弓弦緒取りはけ引く人は後の心を知る人ぞ引く

東人之荷向篋乃荷之緒情尓毛妹情尓乗尓家留香問 禅師

東人の荷前そ箱の荷の緒にも妹は心に乗りにけるかも

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