和歌と俳句

万葉集

巻第三

挽歌

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     和銅四年辛亥河邊宮人見姫嶋松原美人屍哀慟作歌四首
加座?夜能 美保乃浦廻之 白管仕 見十方不怜 無人念者
或云 見者悲霜 無人思丹

     和銅四年辛亥に 河辺宮人 姫島の松原の美人の屍を見て かなしびて作る歌四首
かざはやの みほの浦廻の 白つつじ 見れどもさぶし なき人おもへば
或いは 見れば悲しも なき人思ふに

見津見津四 久米能若子我 伊觸家武 礒之草根乃 干巻惜裳

みつみつし 久米のわくごが い触れけむ いその草根の かれまく惜しも

人言之 繁比日 玉有者 手尓巻以而 不戀有益雄

ひとごとの 繁きこのころ 玉ならば 手に巻きもちて 戀ひずあらましを

妹毛吾毛 清之河乃 河岸之 妹我可悔 心者不持
     右案 年紀并所處及娘子屍作歌人名已見上也 但歌辞相違是非難別 因以累載於?次焉

妹も吾れも きよみの河の 河岸の 妹が悔ゆべき 心は持たじ
     右は 案ずるに 年紀并せて所処また娘子の屍の歌をつくる人の名と すでに上に見えたり      ただし 歌辞相違ひ 是非別きかたし よりてこの次に累ね載ず

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