良暹法師
白菊のうつろひ行くぞあはれなるかくしつつこそ人も枯れしか
藤原経衡
植ゑおきし人の心は白菊の花よりさきにうつろひにけり
中納言定頼
我のみやかかると思へばふるさとの籬の菊もうつろひにけり
中納言資綱
むらさきにうつろひにひしを置く露のなほ白菊とみするなりけり
前大納言公任
山里の紅葉見にとや思ふらん散りはててこそとふべかりけれ
平兼盛
からにしき色見えまがふもみぢばの散る木のもとは立ち憂かりけり
清原元輔
紅葉ちるころなりけりな山里のことぞともなく袖のぬるるは
白河院御製
もみぢばの雨とふるなる木の間よりあやなく月の影ぞもりくる
法印清成
もみぢちる秋の山邊はしらかしの下ばかりこそ道はみえけれ
堀河右大臣頼宗
水上にもみぢながれて大井河むらごにみゆる瀧の白絲
中納言定頼
水もなく見えこそわたれ大井河きしのもみぢば雨とふれども
藤原範永朝臣
見しよりも荒れぞしにける磯の上秋は時雨のふりまさりつつ
伊勢大輔
秋の夜は山田のいほに稲妻の光のみこそもりあかしけれ
源頼家朝臣
宿近き山田のひたにてもかけで吹く秋風にまかせてぞみる
相模
秋の田になみよる稲は山川の水ひきかけし早苗なりけり
源頼綱朝臣
夕日さす裾野のすすき方よりにまねくや秋を送るなるらん
藤原範永朝臣
あすよりはいとど時雨やふりそはん暮れ行く秋を惜しむ袂に
藤原範永朝臣
明けはてば野邊をまづ見ん花薄まねくけしきは秋にかはらじ
法眼源賢
秋はただけふばかりぞとながむれば夕暮れにさへなりにけるかな
大貮資通
としつもる人こそいとど惜しまるれ今日なかりなる秋の夕暮
源兼長
夜もすがら眺めてだにもなぐさまん明けてみるべき秋の空かは