和歌と俳句

河東碧梧桐

構へたる並松もあり春の水

風垣を結ひそふ磯田苗代かな

木置場の坪も虎杖林かな

岩を割く樹もある宮居躑躅かな

筏組む日を山吹に猿の出て

長閑なる水暮れて中灯ともれる

土竜穴納屋に明きしも長閑なり

家鴨遊ぶ湖落口や柳鮠

花漬を買ふや遅日に枕して

涅槃像をあらは天草民家かな

磯岩に飛び岩の鵜も余寒かな

紙礫打たれん が下座にて

わしが城と川舟唄もうらゝか

三名城の一に人馬を飛ぶ

菜の花や和蘭屋敷城山に

や峡の戸なりし飛岩に

麦やせをおろそかに畑かな

餅蓬も雪交り摘みし首途かな

岬宮の芽芝青きを汐干きし

舟行百里と碑林の記にも春の水

火の国も海の前後や風光る

一揆潰れ思ふ汐干の山多し

夏近き試錐も海浜櫓かな

夏近き峰晴れを後ろ塗る雲に