藪の穂に村火事を見る渡舟かな
山寺の鐘殷々と村の火事
大原女に又ことづてや年の暮
藪の池寒鮒釣りのはやあらず
流れ行く大根の葉の早さかな
ほつかりと灯ともる窓の干菜かな
寒き風人持ち来る煖爐かな
しづかにも漕ぎ上る見ゆ雪見舟
水仙を剪りに書堂を下りけり
柊をさす母によりそひにけり
生れゆく帚の先の落葉かな
ゆるやかに水鳥すすむ岸の松
病床にある誰彼に年暮るる
行く年のともしびなりと明うせよ
万両の實は沈み居る苔の中
鷲騒ぐ隣の檻に鷹静か
もろ翼しかと収めて鷹はあり
つく杖の先にささりし朴落葉
踏みあるく落葉の音の違ひけり
東京の南に低き冬日かな
枯芒飛ぶ蟲さへも居らずなり
鉛筆で助炭に書きし覚え書
ほつかりと梢に日あり霜の朝