鉄板を踏めば叫ぶや冬の溝
冬麗ら花は無けれど枝垂梅
静さに耐へずして降る落葉かな
鼻の上に落葉をのせて緋鯉浮く
柴漬の悲しき小魚ばかりかな
牛立ちて二三歩あるく短き日
冬日柔か冬木柔か何れぞや
酔ひたはれ握る冷たき老の手よ
冬木中生徒の列の現れ来
マスクして我と汝でありしかな
太陽を礼賛してぞ日向ぼこ
倫敦の濃霧の話日向ぼこ
伊太利の太陽の唄日向ぼこ
雑炊や後生大事といふことを
枯るる庭ものの草子にあるがごと
話のせて車まつしぐら暮の町
かるがると上る目出度し餅の杵
行年や歴史の中に今我あり
日ねもすの風花淋しからざるや
寒雨降りそそげる中の枝垂梅
羽ひらきたるまま流れ寒鴉
鳴くたびに枝踏みゆるる寒鴉