和歌と俳句

水原秋櫻子

小鳥来る日々の果てなる今日の二羽

霜降茸採る人稀に落葉積む

小沼の牧閉ぢて汀の氷りけり

榛名山錦繍寂びぬ七五三

散紅葉鳥獣絵巻かくれなし

香焚いておろす蔀や山紅葉

侘び寂びのすがたに柚釜ならびけり

夜半いづる山月障子かがやきて

霜の月華厳浄土を照らすなり

満天星の紅葉をかさね石組めり

笹鳴や大刈込をくぐりては

舟着やうきくさ紅葉敷き寄せて

紅葉焚き修学院村けぶりけり

蕪村忌や画中酔歩の李太白

木の実降る風や焚きつぐ登り窯

懸巣かとききける声も雨くらし

羽子板や勘平火縄ふりかざし

柴門や詣でじまひの福禄寿

遊蝶花春は素朴に始まれり

朝寝せり孟浩然を始祖として

百年を経し鏡葉や白椿

月いでて薔薇のたそがれなほつづく

葭切のなびき遅れし葭にをり

利根堤くらさもくらし夏芝居

盆すぎや漆びかりの七つ窯