元旦の爪だつ素足見てさめき
青くさびしく望遠鏡裡冬の天
二つ三つ林檎ころがし「臥てゐろよ」
枯野起伏明日といふ語のかなしさよ
乳児の黒瞳さめて見てゐる牡丹雪
霜夜子は泣く父母よりはるかなものを呼び
子の脚がはね霰がはね視野ゆたか
また夢に入り来て冬の街の角
鉛筆書きの濃く淡く冬嶺濃く淡く
疲れ寝の妻の手うごく冬畳
牛の鼻吹雪へ吹雪へ押し出され
喘ぐ牛の重さが雪に印せしあと
寒鯉を剖くや刃づたふ重き力
水のんできて雪嶺の濃くなりぬ
冬鵙へはがねのごとく病めるなり
こがらしやしかとくひあふ連結器
遥かなるかな雪夜明りの書を出でて
鵙の貌の出てきさうなる冬芽かな
寒明けの臥てあやす子は胸の上
猫が嗅ぐ寝かへる鼻の春寒を
ゆく雁や焦土が負へる日本の名