和歌と俳句

長谷川素逝

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地に敷いて落葉のしじまときにあり

ふとき幹落葉の土をぬいてたつ

地のしじま落葉のしじま敷きにけり

たまさかの落葉の音のあるばかり

落葉敷いて大地の思念はじまりぬ

足音をつつみて落葉あつく敷く

地に敷いて朝の落葉のささやかず

かさなりて栗の落葉のみな長し

土くれと濡れ朝の日の柿落葉

あたらしき柿の落葉のかさなりて

地に柿の落葉の綺羅のうらおもて

しづかさをひいて落葉の音つたふ

かそけさの落葉の音の枝をつたふ

ぬきんでて八つ手の花の日なたあり

花石蕗にさしてうす日やかげりがち

あたたかく枯れたるものの日の黄いろ

風よけの中の日なたの饐ゆるほど

藁屋根の大きな日なた霜解けて

日輪の下にうかみて小春雲

しづかなる小春となりし枝のさき

田と暮れて籾がらを焼く煙かな

山国のまことうす日や翁の忌

底冷えのこの朝夕を栖まれしか

暮れてゆく落葉おのおのおのが位置

刻々と土の落葉の暮るるのみ

なほ暮れて落葉おのおの土の上

足もとの落葉をのこし暮れにけり

音暮れて土の落葉のおちつかず

土と暮れ落葉は闇にもどりけり

短日の障子のひとつなほ日なた

灯くまでの障子の中に夕ぐらさ

雨の夜の火鉢をいれて冬めきぬ