前齋院六條
逢ふことをとふ石神のつれなさに我が心のみ動きぬるかな
源雅光
數ならぬ身をうぢ川のはしばしと言はれながらも恋ひわたるかな
修理大夫顕季
玉つ島岸うつ波のたちかへりせないでましぬ名残こひしも
顕仲卿女
心からつきなき恋をせざりせば逢はで闇には惑はましやは
内大臣家小大進
かくばかり恋のやまひは重けれど目にかけ下げて逢はぬ君かな
源顕国朝臣
我が恋は賤のしげ糸すぢ弱み絶え間は多くくるは少なし
よみ人しらず
あま雲の返しの風の音せぬはおもはれじとの心なりけり
あしひきの山のまにまに倒れたるからきは一人ふせるなりけり
津の国のまろ屋は人をあくたがは君こそつらき瀬々は見せしか
あふみてふ名はたかしまに聞こゆれどいづらはここにくるもとの里
笠取の山に世をふる身にしあれば炭焼もをる我が心かな
み熊野に駒のつまづくつづら君こそまろがほだしなりけれ
こりつめるなげきをいかにせよとてよ君にあふごの一すぢもなき
はかるめる事のよきのみ多かれば空なげきをばこるにやあるらむ
逢ふことのいまはかたみの目をあらみもりて流れむ名こそ惜しけれ
逢ふことはかたねぶりなるいそひたひひねりふすともかひやなからむ
逢ふことのかた野にいまはなりぬれば思ふがりのみ行くにやあるらむ
あふみにかありと言ふなるかれひ山君は越えけり人と寝ぐさし
逢ふことなからふるやの板じとみさすがにかけて年の経ぬらむ
かしかまし山の下行くさざれ水あなかま我も思ふ心あり
盗人といふもことわり小夜中に人の心をとりに来たれば
花うるしこやぬる人のなかりけるあな腹黒の君が心や