前大納言公任
ここに消えかしこに結ぶ水の沫のうき世にめぐる身にこそありけれ
前大納言公任
さだめなき身は浮雲によそへつつはてはそれにぞなりはてぬべき
花山院御製
世の中はみなほとけなりおしなべていづれのものと分くぞはかなき
僧都源信
おほそらの雨はわきてもそそがねどうるふ草木はおのが品々
清少納言
もとめてもかかるはちすの露をおきて憂き世にまたは帰るものかは
藤原国房
月かげの常にすむなる山の端をへだつる雲のなからましかば
堀川入道左大臣俊房
入る月を見るとや人はおもふらん心をかけて西にむかへば
瞻西上人
たきぎ尽き煙もすみて去りにけんこれやなごりと見ぞかなしき
藤原敦家朝臣
夢さめむその暁を待つほどの闇をも照らせ法のともし火
前大僧正覚忠
世をてらす仏のしるしありければまだともし火も消えぬなりけり
前大僧正覚忠
見るままに涙ぞ落つるかぎりなき命にかはるすがたとおもへば
僧都覚雅
千歳までむすびし水も露ばかりわが身のためとおもひやはせし
前大僧正快修
うれしくぞ名をたもつだにあだならぬ御法の花にみをむすびける
源俊頼朝臣
わび人の心のうちをよそながら知るや悟りのひかりなるらん
崇徳院御製
誓ひをば千尋の海にたとふなり露も頼まば數にいりなむ
前参議教長
はかなくぞ三世の仏とおもひけるわが身ひとつにありと知らずて
前参議教長
照る月の心の水にすみぬればやがてこの身にひかりをぞさす
前大僧正覚忠
帰りても入りぞわづらふ真木の戸をまどひ出でにし心ならひに
崇徳院御製
降る雪は谷のとぼそをうづむとも三世の仏の日や照すらん
御返事 仁和寺後入道法親王覚性
照すなる三世の仏の朝日には降る雪よりも罪や消ゆらん