和歌と俳句

釈迢空

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わがともがら 命にかへし恋ながら、年来り行けば、なべてかなしも

いくさ君 武田がのちに、はかなさよ。わび歌多し。あはれ わが友

君にわかれ ひとりとなりて入りたてば、冬木がもとに、涙わしりぬ

はつくさに 雪ちりかかる錦部の 山の入り日に、人ふりかへる

牟婁の温泉の とこなめらなる岩牀に、枕す。しばし 人をわすれむ

月にむき、ながき心は見もはてず わかれし人のおとろへおもふ

木がらしの吹く日来まさず。わがかどの冬木がうれの 心うく鳴る

そのかみの 心なき子も、世を経つつ、涙もよほすことを告げ来る

ひたすらに、荒山みちは越えて来つ。清きなぎさに、身さへ死ぬべし

十年へつ。なほよろしくは見えながら、かの心ひくことのはのなき

このわかれ いく世かけてはおぼつかな。身さへ頼まぬ はかなさにして

あはむ日のなしとおもはず。ふみわたる茅生の ほどろに 心たゆたふ

秋の山 なつ鳥もなし。わが道は、朝けの雲に末べこもれり

石川や 二里も 三里も、若草の堤ぬらして、雨はれにけり

はたはたと翼うち過ぐ。あはと見る まなぢはるかに きその鳥行く

冬ぐさの堤日あたり 遠く行く旅のしばしを 人とやすらふ

萩が花はつかに白し。ひとりゐる 山のみ寺のたそがれの庭

山の石 とどろとどろと落ち来る。これを前に見、酒をたのしむ

旅にゐて、さむき夜牀のくらがりに、うしろめたしも。いねしづむ胸