和歌と俳句

柿本人麻呂歌集

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大穴道少御神作妹勢能山見吉

大汝少御神の作らしし妹背の山を見らくよしも

吾妹子見偲奥藻花開在我告与

我妹子と見つつ偲はむ沖つ藻の花咲きたらば我れに告げこそ

君為浮沼池菱採我染袖沾在哉

君がため浮沼の池の菱摘むと我が染めし袖濡れにけるかも

妹為菅實採行吾山路惑此日暮

妹がため菅の実摘みに行きし我れ山道に惑ひこの日暮らしつ


兒等手乎巻向山者常在常過往人尓往巻目八方

子らが手を巻向山は常にあれど過ぎにし人に行きまかめやも

巻向之山邊響而往水之三名沫如世人吾等者

巻向の山辺響みて行く水の水沫のほとし世の人我れは

遠有而雲居尓所見妹家尓早将至歩黒駒

遠くありて雲居に見ゆる妹が家に早く至らむ歩め黒駒


今造斑衣服面影吾尓所念未服友

今作る斑の衣面影に我れに思ほゆいまだ着ねども

紅衣染雖欲著丹穂哉人可知

紅の衣染めまく欲しけども着てのほはばか人の知るべき

于各人雖云織次我廿物白麻衣

かにかくに人は言ふとも織り継がむ我が機物の白き麻衣

安治村十依海船浮白玉採人所知勿

あぢ群のとをよる海に舟浮けて白玉採ると人に知らゆな

遠近磯中在白玉人不知見依鴨

をちこちの磯の中にある白玉を人に知らえず見む縁もがも

海神手纏持在玉故石浦廻潜為鴨

海神の手に巻き持てる玉故に磯の浦廻に潜きするかも