定家
あけぬともなほ面影のたつた山恋しかるべき夜半のそらかな
定家
龍田山もみぢ踏み分けたづぬればゆふつげ鳥の聲のみぞする
定家
夏衣たつたの山にともしすと幾夜かさねて袖ぬらすらむ
定家
立田山やまの通ひ路おしなべて紅葉をわくる秋のくれかな
定家
龍田山一葉おちちるなつかげもおもひそめてし色は見えけり
俊成
秋ははや立田の山の山颪の麓の里に告ぐるなりけり
良経
立田山をりをり見する錦かな紅葉し峰に花さきにけり
良経
秋風の立田山より流れきて紅葉の川を暮るる白波
良経
おもかげに紅葉の秋の立田山ながるる花も錦なりけり
定家
面影はたつたの山の初もみぢいろに染めてしむねぞ焦るる
良経
白露も色染めあへぬ立田山まだ青葉にて秋風ぞ吹く
定家
たつた山よものこずゑの色ながら鹿の音さそふ秋のかはかぜ
定家
時雨せし色はにほはずからにしきたつたの嶺のはるの夕風
定家
昨日けふ山のかひより白雲のたつたのさくら今かさくらむ
定家
龍田山ゆふつけ鳥のをりはへて我がころもでにしぐれふるころ
定家
昨日今日やまのかひより白雲のたつたのさくら今かさくらむ
実朝
雁なきてさむき嵐のふくなべに立田の山はいろづきにけり
実朝
けさ来なく雁がねさむみから衣立田の山はもみぢしぬらん
実朝
はるかすみたつたの山の桜花おほつかなきをしる人のなさ
新勅撰集 家隆
しろたへの ゆふつけどりも おもひわび なくやたつたの やまのはつしも
続後撰集・秋 寛喜元年女御入内屏風に 前大納言為家
立田山 よその紅葉の 色にこそ しぐれぬ松の 程も見えけれ
定家
龍田山かみのみけしに手向くとや暮れ行くあきの錦おるらむ
定家
立田山木葉のしたのかりまくらかはすもあだに露こぼれつつ