五十嵐播水
燈台の真上の空は既に秋
長き夜の月欠けてあり市原野
秋の暮通りぬけたる天龍寺
ひるからの秋の日見えぬ貴船かな
秋風に三味ひく舟のなかりけり
秋晴や草にかくれて潦
秋晴や枯れはじめたる八重葎
秋晴やみだれ伏したる水辺草
秋晴や比叡より亘る如意ヶ嶽
秋晴れて竹伐る音や光悦寺
秋晴や杉生の面紺青に
近よりて紫苑色なき良夜かな
月の海一帆昏きばかりなり
あきらかに潮流るる月下かな
雲すべて月に向つて耀けり
月出づと大空の星ゐならびて
遅月の月代とこそ知られけり
筆硯のそろへば出づる月見船
月の道大大阪のうちとかや