犬つれて松原ありく月見哉 子規
大磯の町出はなれし月見哉 子規
後しざりしながら戻る月見哉 子規
沙濱に足くたびれる月見哉 子規
寝ころんで椽に首出す月見哉 子規
橋二つ三つ漕ぎ出でて月見哉 子規
物干しに大阪人の月見哉 子規
方丈や月見の客の五六人 子規
簫吹くは大納言なり月の宴 漱石
月に行く漱石妻を忘れたり 漱石
漕ぎ出でて月見の船や湖半 碧梧桐
月見るも斯君斯老の二人かな 碧梧桐
お月見や畳にこぼす花の水 淡路女
月見るや山冷到る僧の前 石鼎
月の友三人を追ふ一人かな 虚子
月見舟あまり漕ぎ出て眺めなし 花蓑
能登人の四五人まじる月見かな 普羅
着きし座を起つことなくて月を待つ 風生
舟べりに頬杖ついて月見かな 青邨
縁側の一番端の月見かな 青邨
筆硯のそろへば出づる月見船 播水
蚊遣火のをりをり燃えて月見舟 播水
牧場守そこらに出でゝ月を見る 青邨
硝子戸にうつる月見の団子かな 青邨
もうやまぬ雨となりたる月見かな 立子
屋上の舟のやうなる月見かな 立子
観月や高張立てて百花園 淡路女
はろばろと来て山高き月見かな 月二郎
三人のふだんの友と月見かな 花蓑
病むわれに妻の観月短かけれ 草城
夕暮に家を立ち出で月の会 虚子
みほとけの一隅貰ひ月に座す 林火
かたはらに生簀の騒ぐ観月会 林火
新藁の円座に月の客となる 林火