灯りて青葉蒸す香の夏に入る
雨の牡丹佛にきりてきたりけり
袷着て袂にたすきうつしけり
露地の雨葺きたる菖蒲ぬらしふる
俄雨やみたる菖蒲葺きにけり
足あげてゐる飾り馬かざりけり
釣堀の空に立ちそめ鯉幟
ブルニエにリッツに薄暑いたりけり
単物著てエプロンに透き見ゆる
月見草無理な小言をいはれけり
月見草ささげ改札口いで来
仲見世にすでに片蔭できてゐる
どこまでも眞ッ直に行き牡丹園
なにもかも夏めく影を落すかな
ふく風もまつり間近くこのあたり
梅雨の草空の光に縋りけり
梅雨の屋根沖の光を返しけり
楡芽ぶき薄暑の雲のはやうかび
浴衣著てうちはを下げて用ありげ
草笛をふいて神田の生れかな
あやめ咲く汀のみたき遠まはり
短夜の水にうく灯のそれぞれよ
みじか夜やおもはぬ方にうらばしご
短夜や水をかづきて石たひら
海のかたへ消えてゆきたる蛍かな