日の匂水の匂や行々子
業平忌すだれ清げに見ゆるかな
東京の盆ぬけて来て青田かな
みづうみへけしき競へる日除かな
うすもののみえすく嘘をつきにけり
水打てる道の夕日のいま眞面
夏の夜や水からくりのいつとまり
夕焼も海の匂も消えしとき
夕焼のそむる上衣をぬぎて手に
梅雨に入る八つ手の古葉焚きしより
親一人子一人蛍光りけり
ぬけうらを抜けうらをゆく日傘かな
昼まへに用かたづきし袷かな
芍薬のはなびらおつるもろさかな
ふく風の雨氣にまけし穂麦かな
おもかげをしのぶ六日のあやめかな
與右衛門の足の細さよ立版古
みじか夜や劫火の末にあけにけり
六月や風にのりくる瀬音あり
あけやすき道のつまさき上りかな
梅雨の宿一とすぢ川のみゆるかな
になれたる欅のことに梅雨の園
夏霞水田つづくかぎりかな
肩さきにおとろへみゆる浴衣かな
何もかもあつけらかんと西日中
涼しき灯すずしけれども哀しき灯