舟に据ゑ海へ供へし鏡餅
三角を忌まずげんげの三角田
著莪の花帝の怨霊斑となりて
低鼻豊頬げんげ田に寝かされて
観音の千手を今年竹も持つ
三つの火の巴蛍は何為せる
少年の腰にともれる蛍籠
砂に苗置きて御田植総ざらひ
長滝に容れて滝壺大いなる
水楼に憩ふ離宮の草刈女
雪渓が直立峰の高ければ
高嶽の襞に雪渓枝別れ
熔岩流れ入りたる海に泳ぎをる
峰雲を突かむと二角獣の雲
盆の荒れ三方岩の壁の海
白山の神を稲田に勧請して
昼顔の花も電波を受けとむる
全山の紅葉崩れ場を除く他
龍胆を胸に黒部の地下働き
寒夜いま弁才天と吾とのみ
霧の中一筆描きの白は滝
四時起きに残雪の富士起きゐたり
山小屋に寝たり丸太を枕とし
残雪の富士吾が登る道を空け
富士山頂吾が手の甲に蠅とまる
富士山を覆ひし雪の残に触る