高草に雲の臭ひや湧く泉
鍬をもつて農夫ひろげし泉かな
夏鹿の大路かけりしすねの音
杣が子に日中さみしき清水かな
夕立や芥たく煙おもしろし
風鈴や荷風に向かつてしづしづと
風鈴や糸のほそさに音すめる
迫近き清水の宿の灯かな
日盛の我影さびし草清水
魂守りて怒れる虫や岩清水
桶めげてたあいなかりし清水かな
月代の後山くらし磯清水
こめかみに汗二すぢや花圃の人
蚊火たいて主は縁に祭かな
水打ちし苔に日当る祭かな
灯の海に電車とまりし祭かな
炎天や枳殻をわたる烏蝶
糊浴衣着て炎天の庵主かな
炎天や濃く出て小さき雲の峰
炎天のレール高反らしストツパア
ひでり這ふ鯰の背のみゆるかな
藻屑蟹穴ゆるがせしひでりかな
天牛の枝はなれとぶ旱かな
青天を天牛とべる旱かな