昼寝人にバケツの蟹の騒がしき
夕づきて午寝さめたる枕かな
翡翠の光りとびたる旱かな
菱の葉に翡翠とまる旱かな
銅蓮の熱くなるまで旱乾れ
こつねんとたたく水鶏や夕旱
はるばると夕雲沈む旱かな
玄関より奥の間遠き曝書かな
睡蓮や鯉の尾水の上に出て
睡蓮に銅蓮の水涸れにけり
泳ぎ子に雲影走る山家かな
あらあぶな石などなげて泳ぎの子
石段の苔と古り居る若葉かな
香水の人さ緑の若葉より
つやつやと痩せし河鹿に夕近し
自動車のおどり着きけり河鹿宿
雲の峰消ゆるや蛍苗田より
薯畑と浜の堺や夕蛍
もれ出でて 蛍いくつも籠の紗に
葉の蛍風の蛍にただならず
夏川や一つ瀬やがて二た流れ
幾度も朝霧襲ふ時鳥
葉桜に霧の雫や時鳥
余念なき田畑の人に雲の峰
あるときをひろごりもゆる雲の峰