和歌と俳句

原 石鼎

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滝の面梅雨入に近くくもりけり

梅雨深し花の風雨も昨日今日

青梅や梅酢や梅雨の草の宿

梅雨庭をはいてつかれし主かな

草の戸や濡れてかかれる梅雨の鎌

梅雨じめる葉をくぐり出し雨蛙

馳け過ぎし下駄音ひとつ梅雨の闇

たそがれの人通りけり梅雨の門

夕かけて梅雨雷や草の原

蛍火の光芒ながき梅雨かな

梅雨闇へ出てあくびせし夜の人

熟れかけて紅躍りゐる桜んぼ

青梅の枝をわたりし蜥蜴かな

梅一斗漬け得て日日の曇り哉

年々に湖すたれゆく早苗かな

籬さへ夜々の蛙や田植時

蛍高く消え細りゆく植田かな

余り苗湖のほとりに植ゑにけり

滝風に吹かるる枝の蛍かな

庭へ来しに雨の光りかな

大雨の蛍や幹のまん中に

船波に鳴り伏す蘆の蛍かな

船波にみだるる蘆の蛍かな

大蛍羽音たててとびにけり

田の松をこぼるるほたる真つ直ら

雨の松をこぼるる蛍真つ直ら