地の苔をてらし去りたる蛍かな
草の根と土とてらせる蛍かな
かすけさや羽音たてたる籠蛍
日盛の蛍に水をやりにけり
日盛の籠を逃げたる蛍かな
山川や岩のはざまの水馬
森の道に火をつくろひし夜振かな
旱魃の夜々をいざよふ夜振かな
山蔭の水の隅なる翡翠かな
飛ぶやはや嘴に物獲し翡翠かな
赤き太き嘴で翡翠尾短な
翡翠打つ水のくらさや菱の花
岩壁に鼻突き死にし翡翠かな
なかなかに蚊帳つるまでの蚊なるかな
蚊遣香にむせて更けゐし雨夜かな
滝茶屋のいぶしたてたる夕蚊遣
大風の火の子散らせし蚊遣かな
蚊に堪へで終にやめたる蚊遣かな
襲ふ蚊の顔火に見ゆる蚊遣かな
大利根のたそがれ見よや蚊喰鳥
青嵐梅雨のはれ間の二三日
青嵐や広葉の笛をひるがへし
青嵐やとりどり植ゑし苗の数
青嵐やなほ干すものに種袋
薫風や池をめぐりてもとの道