和歌と俳句

原 石鼎

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動くものみな緑なり青嵐

懐しき心起りぬ青嵐

葦簾の半ばを照らす夕日かな

夏の蜂石燈籠にとまりけり

夏の夜やどの部屋よりも星見ゆる

網戸近く来て犬吠えし夜なるかな

潮騒の音響き居り午寝覚め

さまざまのの時雨や相模灘

牛の声についでの声夕簾

山つみと山ひめの時雨かな

胡麻の花見返へり妻は出かけけり

なかんづく緋の天鵞絨のだりあかな

窓あけて翠微の中や更衣

のびのびと伸び葉も枝も若葉かな

静けさは地軸より出で若葉まで

松の幹を隠し了せし庭若葉

濡れ濡れとして風もなく八重若葉

雨粒の葉の面に砕つ若葉かな

梅若葉檐の裏へも伸びにけり

小屋組の出来て見え居る若葉かな

今日の鳥皆だまり飛ぶ若葉かな

雨粒に動く葉のある若葉かな

鯖の卵を箸で崩して食ふべけり

石斑魚の子串焼きにして届きけり

一輪の胡瓜の花と串石斑魚