和歌と俳句

日野草城

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むらがりていよいよ寂しひがんばな

曼珠沙華茎の脆さよ折り散らす

赤々と咲いてま哀しひがんばな

夕風やへらへら笑ふしびとばな

川波の音夕づけるかな

穂薄に居てはるかなる旅情かな

うら若き妻はほほづきをならしけり

暮れはてて提灯つけぬ蕎麦の花

亀の居て破れ蓮の水うごきけり

地に平和敗荷の水は澄みとほる

夕冷えや切石に置くをみなへし

大原女の恋をきかばや藤袴

藪蔭を出てあたたかしの秋

豊稲に如意が掲ぐる朝日かな

掛稲に青のさざらの晩稲かな

晴れて蒼き煙を上ぐる家

建ちてまだ住まぬ一棟の秋

案山子かと見れば人なり熟るる

早稲は黄に晩稲は青き日和かな

天つ日の入りし嘆きや黍畑

斜雨太く来て黍畑の薄暮かな

川霧の更けて及べり月の黍