むらがりていよいよ寂しひがんばな
曼珠沙華茎の脆さよ折り散らす
赤々と咲いてま哀しひがんばな
夕風やへらへら笑ふしびとばな
川波の音夕づける薄かな
穂薄に居てはるかなる旅情かな
うら若き妻はほほづきをならしけり
暮れはてて提灯つけぬ蕎麦の花
亀の居て破れ蓮の水うごきけり
地に平和敗荷の水は澄みとほる
夕冷えや切石に置くをみなへし
大原女の恋をきかばや藤袴
藪蔭を出てあたたかし稲の秋
豊稲に如意が掲ぐる朝日かな
掛稲に青のさざらの晩稲かな
稲晴れて蒼き煙を上ぐる家
建ちてまだ住まぬ一棟稲の秋
案山子かと見れば人なり稲熟るる
早稲は黄に晩稲は青き日和かな
天つ日の入りし嘆きや黍畑
斜雨太く来て黍畑の薄暮かな
川霧の更けて及べり月の黍