和歌と俳句

軽部烏頭子

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しぐれつゝ暮るゝならひの二三日

藁塚のおなじ姿にかたむける

水稲を刈るがかなしとなげきつゝ

刈り浮けし水稲はこぶ舟きたる

うごめきて霜の蝗の捕られけり

籾を干す人のちらつく籬ごし

鮭網の鈴がなるなりゆめうつゝ

鮭網のあげし水勢やしんのやみ

鮭網や苫にあめふるしんのやみ

雁の棹消えゆくあやのもつれけり

鵯去りてもちの赤き実こぼれ居り

枯菊も干煎餅もからからに

啓蟄の虫に従ふあゆみかな

つばさあるものゝあゆめり春の土

掃きよする土にはりつき種袋

おのづからのかよひぢわかれみち

ふらゝこの片外れして春の山

散りかたとなりし機屋のゆきやなぎ

後れたる友山吹をかざしくる

捨てゝあるみやますみれの萎えやらず

夜振の火もつれて里をはなれけり

夜降の火里をはなれてちりぢりに

土ふかくしどみは花をちりばめぬ

ほうたるとほそしき水をへだてゆく

ほうたるのついてきたりし灯をそらす

柳より降りしほうたる草をくゞる

袖垣のひくき一つにほうたるが

ほたる火に歩あはせてたのしけれ

ひとすぢの茅の葉つらぬき蛍籠

走馬燈山河崩れて静かかな

走馬燈ともしつぎしが子等はいねぬ

子等いねて走馬燈よくまはる

七夕を流すと夙くも子は起きぬ

舁きゆくや霧にぬれたる七夕を

七夕を舁きて堤の霧がくれ

たれもする頃の日覆われもして

ひとりゐて氷をはめりマスコット

りんどうに晨のあゆみとゞめつゝ

学徒ゆき山袴ゆき白露かな

落葉松の浅きところにキヤムプして

いなづまに白しと思ふ合歓の花

はなびらのくづれて蓮の実となりぬ

下総の丘の小松は稲架けし

稲刈のたけなはにして野はしづか

舟やるや稲結ふ藁を腰にして

椋鳥のまぐりめぐり来日和かな