臥たる胸しづまりゆけば、天さかるひなの薩摩し さやに見え来も
告げやらば 若き心に歎かめど、汝が思ひ得むわびしさならず
しどとより疲れ帰りて、うつつなく我は寝れどむ、明日さめにけり
朝鮮の教師に ゆけと慂め来る あぢきなきふみに、うごく わが心
まのあたり ま日薄れ来る窓がらす 今はほのめくわが手の動き
捲きたばこ 藁灰ふかくさしたれば、夕づく部屋に、いぶりいでつも
こがらしの凪ぎにし後のあかるさや ゆきとどまらず。あすふあるとの道
いささめの町のあるきに、並み来つつ 相知らなくも、さびしかりけり
芝口の車馬のとよみの、昼たけて け近く聞ゆ。この足もとに
高架線のぷらつとほうむ 長ながと、今日も冱えつつ 昏るるなりけり
汽車のまど そこにさびしく さし対ひ めをといませて 汽車遠ざかる