和歌と俳句

釈迢空

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清志に与へたる

臥たる胸しづまりゆけば、天さかるひなの薩摩し さやに見え来も

告げやらば 若き心に歎かめど、汝が思ひ得むわびしさならず

しどとより疲れ帰りて、うつつなく我は寝れどむ、明日さめにけり

朝鮮の教師に ゆけと慂め来る あぢきなきふみに、うごく わが心

校正室

まのあたり ま日薄れ来る窓がらす 今はほのめくわが手の動き

捲きたばこ 藁灰ふかくさしたれば、夕づく部屋に、いぶりいでつも

新橋停車場

こがらしの凪ぎにし後のあかるさや ゆきとどまらず。あすふあるとの道

いささめの町のあるきに、並み来つつ 相知らなくも、さびしかりけり

芝口の車馬のとよみの、昼たけて け近く聞ゆ。この足もとに

高架線のぷらつとほうむ 長ながと、今日も冱えつつ 昏るるなりけり

汽車のまど そこにさびしく さし対ひ めをといませて 汽車遠ざかる